相続とか、遺言とか、不動産経営とか、中小企業とか

相続、遺言、借地・借家や中小企業の事業承継に特に関心を持っている大阪の司法書士です。業務の中で感じたこと、気付いたことの情報を発信します。

相続開始から遺産分割まで(1)~遺言書があるとき

相続開始後、相続人が具体的な遺産を承継する(又は承継しない)までの過程においては、いくつかのステップを経ます。そのステップを正しく理解しておくことは、相続に関するトラブルを避けるために、重要なことの一つです。

本シリーズの初回は、最初のステップとして、遺言の有無の調査から、遺言が見つかったときの対応についてです。

【遺言書の有無の調査】

遺言の有無によって、相続の効果、各相続人のなすべき行動が大きく異なります。
被相続人の居室や貸金庫等に、それらしきものが保管されていないか、あるいは近親者からのヒアリング等により、その存否を調査します。公正証書遺言については、公証役場へ照会することにより、一定の範囲で調査が可能です。

遺言書を変造、破棄、又は隠匿した相続人は、相続人の資格を失う(民法891条5号)ことに、注意が必要です。


【自筆証書遺言又は秘密証書遺言が見つかったとき】

公正証書以外の遺言書が見つかったときは、その取り扱いを慎重にしなければなりません。とくに、それが封印されているものである場合、逸る気持ちで開封してはなりません。裁判所での検認期日(後述)以外で開封すると、過料の制裁を受けることがありますし、変造の疑いを受ける理由となりかねません。

遺言書の保管者又は発見者は、被相続人死亡時の住所を管轄する家庭裁判所へ、遺言書の検認を速やかに申し立てる義務を負います。申し立てが受理されると、裁判所から共同相続人全員に通知され、裁判所内で検認期日が開かれます。その期日においては、出頭した共同相続人の眼前で、封印が開かれ、遺言書の物理的状況や文面が検証・記録されます。

家庭裁判所が行う遺言書の検認は、証拠保全手続きの一種で、「これこれこういう形態、形状、内容の遺言が現時点で存在する」ということを公証するに過ぎず、遺言書の効力の判断にまでは立ち入りません。遺言の効力を争う相続人は、遺言無効確認等の訴訟を別途提起する必要があります。


【遺言の解釈】

遺言の内容を確認し、解釈します。
公正証書以外の遺言には、内容不明瞭なものがあり、文面のみからでは解釈が困難な場合には、遺言当時の事情等を勘案することになります。利害関係人間で一致した解釈が不能の場合には、遺言を無効と扱うか、又は訴訟等で解決を図る必要が生じます。


【遺言執行者の選任】

遺言内容に執行を要する事項が含まれている場合には、遺言執行者の選任の要否を検討します。
遺言書中であらかじめ執行者に選任されている者が就任を拒絶したとき、又は予め選任されていないときは、家庭裁判所に申立てて選任してもらいます。
ただし、共同相続人全員が一致して執行する場合には、必ずしも遺言執行者を選任することを要しません。


【遺言の実現】

遺言によって発生する効果に応じて、遺産承継手続きを行い、遺言内容(被相続人の意思)を実現します。
このとき、「遺言によって発生する効果」が遺産の性質等に応じて様々であることに、注意を要します。


次回からは、遺言が無い場合の遺産分割へのステップです。

全地方自治体における行政手続法の遵守状況の調査を求める

昨夜は、腹が立って眠れなかった。

社会福祉法人等の特殊な公益法人は、その準拠法において、所管大臣または地方自治体首長を所轄庁として、認可、指導及び監督を受けることとされている。

司法書士は、それら法人からの依頼により、法人登記申請に必要な各種議事録、あるいは不動産登記申請に必要な各種契約書を作成したり、実体上の要件について助言したりすることがある。この各種議事録又は各種契約書は多くの場合、所轄庁へ提出される書類でもある。そこで、それら書類の体裁や記載文言、内容を巡って、所轄庁配下の職員(公務員)が法人に対して行う指導、勧告、助言等の行政指導の実態を垣間見ることとなる。

残念ながら、その行政指導には、問題が多いと言わざるを得ない。とりわけ、地方自治体におけるそれには、怒りさえ覚えることがある。

合理的な根拠があっての行政指導であれば、法人も、法人の依頼を受けて業務を行う私も、それに従うことにやぶさかではない。

ところが、書類に記載された字句や文章表現の下らない置換要求であったり、関連法令の理解不足による内容変更要求であったりするのである。

字句や文章表現の置換で済むことなら、お好きな言葉に換えてあげましょう。行政通達等に掲示された『例』の通りに書かれていないと適否の判断がつかないというなら、それにも応じてあげましょう。それとて、そのために役所へ無駄に通わされ、時間と費用をロスすることになるのだけれど。

しかし、それだけにとどまらない。一定の私法上又は公法上の効果を得るために、多数の人間が時間と金をかけ、民間の専門的知見を生かして計画し又は実行したことを、合理的な根拠もなく、いとも簡単に覆そうとする。単に書類をいじくっただけのことではないということを、全く理解しない。理由を尋ねても合理的な理由ないし根拠を説明せず、たとえ説明したとしても誤謬の有様では、話にならない。

誤謬に基づく行政指導に応じなければ、役所は「検討します」で、その間否応なく、法人の事業遂行が停滞する。そして無駄な時間を費やした検討の結果もやはり、おかしな行政指導のごり押しである。

行政手続法の存在など、全く忘れられている。

いくら法令を作り改正しても、それを運用する人間がそれを理解せず又は無視するならば、何のことはない、お飾りのお題目である。

総務省行政管理局では、都道府県及び政令都市等、地方自治体の一部について、行政手続法の施行状況を調査・公表している。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/tetsuzukihou.html
それだけで、足りるのか。

私は、むやみに公務員叩きをする風潮には、組しない。しかしそれでも、これには黙っていられない。

今のままで地方分権が進めば、誤謬に基づく公権力の行使により、国民の権利利益が侵害される状況が益々悪化するだろう。

商業法人登記は、このままで良いのか

不動産登記は、権利の得喪に直接つながるため、虚偽登記の出現を防止する観点から、一定の厳格な手続きが要求されます。例えば、登記識別情報(登記済権利書)や印鑑証明書等の公文書を提出することにより、当事者の本人確認をするのも、その厳格な手続きの一部です。

ところが商業法人登記は、登記の真正担保が極めて脆弱です。

先日、多数の会社の登記内容が勝手に変えられて乗っ取りに利用されるという事件が、大阪でありました。
容疑者の一味が「登記は、形さえ整っていたら、誰にもおかしいと言われなかった」とうそぶいたそうですが、誤解を恐れずに言えば、さもありなんです。元の会社関係者が全く関与しないままに、役員の顔ぶれや本店所在地等を変えるのは、簡単です。

比較的厳格な要件を求められるのは、会社設立時くらいでしょう。
しかしそれとて、役員に据える人物の印鑑証明書さえ入手できれば、さほど難しいことではありません。
一昨日には、投資詐欺グループが、無関係の第三者から印鑑証明書を入手して法人設立登記を行っていたという報道がありました。

極端な話、商業法人登記の真正を担保しているのは、登記を規律する会社法や商業登記法(会社以外の法人については、各法人の準拠法や各種法人等登記規則)ではなく、公正証書原本不実記載等を罰する刑法のみです。
(実は我々司法書士は、ご依頼者や自分がその罪に問われないよう、非常に気を使っているのです。)

会社の負担軽減、利便性向上を図るのも良いことには違いありませんが、このままでは、取引の安全に資することを目的とする商業法人登記制度に対する信頼が大きく揺るぎかねないのではないかと、懸念されます。
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